【応用編①】ミョウバンの結晶づくり【密度拡散法】

みなさんこんにちは、manzanaです。
今回は結晶づくりの応用編として、密度拡散法という結晶育成方法をご紹介します。
前回ご紹介した温度差法は短い期間で簡単に結晶をつくることができましたが、一部が白く濁っており、あまり綺麗な結晶ではありませんでした。これは結晶の成長速度が速いために、結晶中の原子の規則的な並びに一部で乱れが生じてしまったことや、不純物を巻き込んで結晶化してしまったことなどが原因です。
そこで今回は、結晶の成長速度をゆっくりにすることで、より綺麗な結晶を育成するために編み出された、密度拡散法という方法をご紹介します。育成期間は長くなりますが、一度装置をつくれば置いておくだけで結晶が成長します。

◆ 実験
<材料>
・釣り糸 (ナイロン製、なるべく細くて柔らかいものが望ましい)
・釣り用浮きゴム×2
・投げ釣り用ロケットカゴ
・縦長のボトル (上記のロケットカゴが入るサイズ)
※今回はセリアの角形調味料ボトルを使用
・大きめの容器 (少なくとも上記の容器の下半分が収まるサイズ)
・アクリル棒 (直径:2 mm、適切な長さに切断しておく)
・お茶パック
・ろ紙 (コーヒーフィルターを2枚重ねて使用してもよい)
・漏斗
・ミョウバンの飽和水溶液
・ミョウバンの種結晶
・ミョウバン (粉ではなく粒状が望ましい)


<実験操作>
① 釣り糸にドライヤーを当ててまっすぐに伸ばし、種結晶を結ぶ。
② 短い方の糸を結び目の近くで切断する
③ アクリル棒をボトルの半分程度の長さになるように切断し、先端を少し細目に削っておく。
④ ボトルの蓋の中心に穴をあける。(穴の大きさは浮きゴムが埋まる程度のサイズ)
 

⑤ ①~④の部品とロケットカゴ、縦長のボトルを下記のように組み立てる。
⑥ お茶パックに粗結晶を入れ、お茶パックをロケットカゴに詰める
(アクリル棒が曲がるのでギチギチに詰めないこと)

  

⑦ カゴ下の浮きゴムとアクリル棒の間に種を結んだテグスを挟んで固定する。
⑧ カゴがボトルの上半分に位置し、種結晶はボトルの底から1 cm以上の高さになるように調整する
⑨ 蓋を外して飽和水溶液をろ過してボトルに入れる。
⑩ 蓋を閉め、種結晶が容器の壁にぶつかっていないことを確認する。



⑪ 上記の縦長ボトルを大きめの容器に入れ、縦長ボトルの半分ほどの高さまで水を入れる。
⑫ 温度変化の少ない場所で静置して、結晶を育成させる。

※ 水槽の水は定期的に取り換えましょう。
※ ボトルの底に結晶がある程度堆積したら、ボトル内の飽和水溶液をろ過して雑晶を除去しましょう。



 

◆ 温度差法との比較
一ヶ月ほど密度拡散法で成長させた結晶がこちらです。前回の温度差法と比較すると大きさは小さいですが、透明度が非常に高いことが分かります。

 

◆ 原理
水は蒸発による気化熱によって、室温から約1 ℃程度低くなっています。そのため、水に浸かっているボトル下部の飽和水溶液も冷却され、ここにある種結晶を成長させます。ボトル内には上下の温度差や密度差に起因した対流が発生しており、下部で種結晶を成長させた飽和水溶液は、対流によって上部へと運ばれます。一方で、ボトルは密閉されているため、上部は室温と同じ温度になっており、これにより上部に運ばれた溶液は温められ、カゴ内の原料を溶かして再度飽和になります。上部で再び飽和となった溶液が下部に運ばれて結晶を成長させて・・・を繰り返すことで、種結晶がだんだんと成長していきます。溶液の対流の速度はかなり遅いため、種結晶もゆっくり綺麗に成長させることができます。



◆ おわりに
いかがでしたしょうか。密度拡散法はミョウバンだけでなく、冷却すると溶解度が下がる物質に大体使えます。また、一度仕込んでしまえば放置で綺麗な結晶が育ちますので、大変楽な方法でもあります。加えて、槽上下の温度差によって結晶が成長しますので、穏やかなであれば室温の変化にもある程度強いことも嬉しい点です。
皆さんも色々な物質の結晶づくりに是非チャレンジしてみてください!!



◆ リンク
【基礎編】ミョウバンの結晶づくり【温度差法】
 本記事の英語版はこちらになります。

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