【基礎編】ミョウバンの結晶づくり【温度差法】

みなさんはじめまして、manzanaです。
綺麗な結晶を育てることをモットーに色々な物質の結晶をつくっています。
みくあす令和ラボでは、結晶づくりに関する記事を書いていきたいと思います!

今回は初回ということで、結晶づくりの基本であるミョウバンの単結晶の作り方をご紹介します。夏休みの自由研究としても定番の実験ですが、意外とコツが必要ではじめは苦労することもあります。今回は溶解度の温度差を利用した再結晶法によるミョウバンの単結晶づくりに関して、コツを含めてなるべく詳細にご紹介します。

◆ ミョウバンについて
今回は一般にカリミョウバンと呼ばれる、硫酸カリウムアルミニウム十二水和物 (化学式:KAl(SO4)2・6H2O) の結晶をつくります。以後、この記事ではカリミョウバンを単にミョウバンと呼びます。ミョウバンはAmazonなどで簡単に購入することができます。今回使用するこちらのミョウバンは八面体の結晶粒の状態で販売されており、そのまま種結晶に用いることができるためおススメです。
ミョウバンは食品添加物としても使用される比較的安全な物質です。そのため、実験廃液はそのまま流しに捨てても問題ありません。
カリミョウバンの他に、アンモニウムミョウバン (化学式:NH4Al(SO4)2・6H2O) や焼き(カリ)ミョウバン (化学式:KAl(SO4)2) が市販されていますが、アンモニウムミョウバンは別の化合物であり、焼きミョウバンはミョウバンから水分子を除いた無水物になります (焼きミョウバンを水に溶かして再結晶させれば十二水和物になりますが、手間ですので最初から十二水和物を買った方がよいと思います) 。
 

◆ 再結晶について
ミョウバンは水に溶けますが、その量には限界があります。それ以上溶けきれなくなった状態を飽和といい、飽和となった溶液に溶けている量を溶解度といいます。多くの物質は高温ほど溶解度が高く、低温ほど低くなります。そのため、高温の飽和水溶液を冷却することで、溶けきれなくなった分が結晶として析出します。もし、この際に種となる結晶が溶液内にあれば、種が成長して大きな結晶になります。このように、溶解度の差を利用して結晶を析出させる方法を再結晶と呼びます。
ミョウバンの各温度における溶解度はこちらをご参照下さい。たとえば30 ℃では、水100 gに対して16.4 gのミョウバンが溶けます。これに対して20 ℃では11.4 gしか溶けることができません。従って、水100 gを30 ℃で飽和させた溶液を20 ℃まで冷やすと、16.4-11.4=5 gのミョウバンが析出します。

◆ 実験
<材料>
・容器×2 (お湯を入れても変形しないもの。ガラス製がおススメ。あらかじめ洗っておくこと)
・マドラー
・釣り糸 (ナイロン製、なるべく細くて柔らかいものが望ましい)
・割りばし (糸を吊るせれば何でもよい)
・ろ紙 (コーヒーフィルターを2枚重ねて使用してもよい)
・漏斗 (百均のプラスチック漏斗でもよい)
・ミョウバン17 g
・水 100 mL

※ 今回の実験は室温20 ℃で行っています。室温が大きく異なる場合は、室温の溶解度+5 g程度を目安に加えるミョウバンの量を調節してください。

<実験操作>
① 種結晶を選ぶ
・購入したミョウバンの中から種となる結晶を選びます。種結晶の形で成長後の形がある程度決まりますので、なるべく透明で正八面体に近い結晶を選びます。コブが付いていたりヒビが入っていたりする結晶は種として不適切です。

※ 粉末のミョウバンしか購入できなかった場合、後述と同じ方法で飽和水溶液を調製し、そのまま析出させて種結晶をつくりましょう。その場合、浅めの容器に溶液入れると結晶同士がくっつく可能性が減ります。(ただし、容器は浅めでも水位は1 cmは確保したほうがよいです)
※ 種結晶を自作する場合、形のよい種結晶が析出したらすぐに溶液からピンセットで取り出しましょう。そのまま数時間放置すると形が崩れる恐れがあります。

② 種結晶を糸に結ぶ
・釣り糸を適当な長さにカットします。このままだと巻き癖が付いて扱いにくいので、糸の両端を軽く引っ張りながらドライヤーを当ててまっすぐに伸ばします。
・釣り糸に種結晶を結びます。結び方は何でもいいのですが、個人的には引き解け結びがおススメです。ミョウバンは八面体のため結ぶのがなかなか難しいのですが、こればかりは根気よく何度も頑張りましょう。
・結んだ種結晶は、埃などが付かないように袋や容器にしまっておきましょう。

※ 結晶を結ぶための釣り糸は、ナイロン製のなるべく細くて柔らかいものを選びましょう。糸の材質によっては、糸自体に結晶が生えてしまう可能性があります。糸は細くて柔らかいものほど結びやすいと思います。
※ 結晶結びに苦労する場合、炎熱した銅線を突き刺す方法もあります。ただし、銅線に別の結晶が生えることがあるため、個人的にはおススメできません。また、銅線表面の酸化銅が溶ける可能性があるため、長期的に育成を行う場合はやめた方がよいでしょう。(銅線が切れたり、溶けた銅によって溶液が青くなる恐れがあります)
 

③ 飽和水溶液を調製する
・ミョウバン (17 g) を容器に入れ、ケトルなどで沸かしたお湯 (100 mL) を加え、マドラーでかき混ぜます。
・ミョウバンが溶けきったら、溶液をろ過してもう一つの容器に移します。ろ紙が無い場合はコーヒーフィルターで代用できます。コーヒーフィルターはろ紙に比べて目が粗いので、2重にして使用しましょう。
・ろ過が終わったら、小さな穴を空けたラップやアルミホイルで蓋をして、温度変化の少ない場所に静置します。

※ ろ過することで溶液内のゴミを取り除きます。蓋をする理由も埃などのゴミが入らないようにするためです。ゴミが入るとそれが核となって細かい結晶を発生させ、その分種結晶が育たなくなってしまいます。
 

④ 結晶を成長させる
・③で調整した溶液がある程度冷めたら、種結晶を割りばしにテープなどで固定して溶液に吊るします。もし、冷ましている最中に結晶が析出するようであれば、すぐに種結晶を入れましょう。
・種を溶液に漬けたら、軽く揺すって表面についた埃を落とします。
・底に発生した結晶とくっつかないようにするため、種の位置が容器の底から最低でも1 cm以上は高くなるようにしましょう。
・再び蓋をして1日程度静置します。

※ 種結晶が結び目から落ちる場合、結び方が原因ではなく、種結晶を入れる温度が高いことが原因である場合が多いです。
※ 理論上は30 ℃以下になれば飽和になっています。
※ 飽和になれば直ぐに結晶が析出するとは限りません。これを過飽和といい、結晶核が生成しにくいことが原因で発生する現象です。種結晶を入れれば、それが核となって成長が始まります。
※ 長く置くことで水分を蒸発させて更に結晶を成長させることができますが、気温が上がると溶けてしまうので注意しましょう。
 

⑤ 結晶を取り出す
・成長した種結晶を引き上げ、溶液から取り出します。
・取り出した結晶についた溶液を、キムワイプやキッチンペーパーなどで拭き取ります。
・釣り糸が邪魔な場合は、カミソリの刃などを用いて根本から切断すると目立たなくなります。
 

◆ 結晶の保存方法
ミョウバンの結晶をそのまま保存すると、しばらくすると表面が白く濁ってしまいます。ミョウバンの化学式はKAl(SO4)2・12H2Oなので、結晶中には水が含まれています。この水分子が結晶から大気へ蒸発してしまうことで、このような白濁が発生してしまいます。この現象を風解 (風化) といいます。風解を防ぐためには、密閉した容器に保存する必要があります。最も簡単な方法は、ユニパックなどのチャック付きの袋に保存することです。この状態であれば、だいたい数年は風解せずに保存できます。
 

◆ おわりに
今回は結晶づくりの基本である、温度差法によるミョウバンの単結晶づくりをご紹介させて頂きました。この方法はミョウバンだけでなく、温めれば溶解度が増加する物質のほとんどに使える方法です。お手軽な方法なので、結晶の形や透明度は少し悪くなってしまいますが、より透明度が高くて綺麗な結晶をつくる方法も今後紹介していきたいと思います!

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