第6回えざおの毒コレクション【G-ストロファンチン】

〈植物毒〉

みなさんこんにちは。
今回ご紹介する“猛毒”はストロファンツスグラツスという植物の種子に含まれているG-ストロファンチンです。あまり聞き慣れない名前ですね。植物毒と言えばアルカロイドをイメージする方も多いと思いますが今回の毒は強心配糖体に分類されます。


僕のコレクションからはストロファンツスグラツスの種子を載せておきます。この時点で恐ろしい毒性を持っています。


ストロファンツスグラツスは熱帯アフリカが原産のキョウチクトウ科の植物で種子に強心配糖体であるG-ストロファンチン(ウアバイン)を含みます。熱帯アフリカの原住民(ソマリ族)はこの種子をすり潰してペースト状にしたものを矢の先端に塗って矢毒として用いました。この矢毒は大型動物にさえ殺傷力を示すため、ストロファンツスはイポー、クラーレ、トリカブトに並ぶ四大矢毒として数えられています。
先程から登場している「強心配糖体」は何かというと心臓の収縮力を増大させるステロイド配糖体の総称です。配糖体は糖とそれ以外の有機化合物がグリコシド結合で結ばれたものの総称でステロイド配糖体は名前の通り、ステロイドと糖が結合した化合物です。


G-ストロファンチンの致死量は人間に換算するとおおよそ150~160mgで心筋収縮力を増大させることによって心臓を止めて死に至らしめます。

何故これほどまでにG-ストロファンチンは強い毒性を示すのか。それはNa?/K?-ATPアーゼと呼ばれる細胞内のナトリウムイオン、カリウムイオン濃度を調整するポンプを阻害するからです。これによって細胞内のナトリウムイオン濃度が上昇して細胞の内と外のナトリウムイオン濃度の差が減少します。するとそれに連動して細胞外へとカルシウムイオンを汲み出すNa⁺/Ca²⁺交換トランスポーターの排出が減少、さらには交換が逆転して細胞内のカルシウムイオン濃度が一気に上昇します。カルシウムイオンは筋肉運動に関係するイオンであるため心筋が収縮して心停止を招きます。

G-ストロファンチンは心臓毒である性質を逆に利用して心機能が低下している患者さんに対しての強心薬に用いられています。イモガイのコノトキシンやトリカブトのアコニチンと同様に毒と薬は紙一重というわけです。
それでは次回の“猛毒”までさよなラジカル。

えざお

【参考文献】
日本薬学会-薬学用語解説-強心配糖体

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