【世界でn番目の元素図鑑・原子番号78番白金(Pt)】

白金と聞くと南北線か三田線沿いかよと思う人が多いでしょう。あとはホワイトゴールドかな?と字面から読み解く人もいるでしょうがホワイトゴールドは金とパラジウムを合金にした金合金です。白金はプラチナのことを指します。さて、皆さんのプラチナへのイメージはどうでしょうか。階級制度のあるシステム(クレジットカードなど)だとプラチナは常にゴールドの上を行きます。僕としての難点はプラチナが銀白色の金属であるという点ですね。やはり身に付けるジュエリーや貴金属は色のついたものがいいです。金が王道を行くでしょう。プラチナカードはいつだってゴールドカードより上の階級といいました、確かにそうですが実際金とプラチナどちらが高いでしょうか。2023年7月現在では単位質量当たりの相場が金は約9700円、プラチナは4600円です。あら、金の方が圧倒的に高いじゃないですか。確かにコロナ禍やウクライナ戦争やシリコンバレー銀行の破綻など世界情勢が大きく変化したため金は数年前の2倍高騰しているわけですがプラチナは下落するばかりです。先ほどのプラチナ制度の話はどこへやら。実は金よりプラチナの方が高い時期もありました。ディーゼル自動車の排気ガスへの触媒が普及した時代2006~9年頃です。プラチナを細かくするとあの銀白色だったものとは思えない真っ黒な粉になります。これは白金黒と呼ばれる触媒になります。触媒効果は主に酸化反応。自動車の例では燃料の不完全燃焼で生じた一酸化炭素やメタンを空気中の酸素で酸化させ二酸化炭素にします。また工業的用途にも化学製造に欠かせない薬品「硝酸」の製造法オストワルト法のアンモニアから二酸化窒素への酸化も白金触媒が使われています。このディーゼル自動車の触媒にはプラチナの他にもパラジウムが使われています。自動車は日常に必要不可欠、ほとんどが一家に一台持っているものです。そんなものに普及したとなれば需要拡大による価格高騰は想像に難くないでしょう。実際当時の金・プラチナ相場は金が3000円、プラチナが6800円と倍以上の開きがありました。しかし、プラチナのような需要安定が見込めない貴金属への投資は危険です。今やディーゼル車はEV車に乗り換えられつつあります。そうともなればプラチナの需要は一気に下落することでしょう。金はその物性上様々な用途がありますがプラチナといえば触媒か宝飾品しか用途が無いというイメージがあります。いえいえ医療用途にもありますよ。抗がん剤です。シスプラチンやカルボプラチンといったプラチナ錯体はそのプラチナイオンが錯体を作りたい欲を利用しています。高校化学で習うイオン化傾向ではプラチナは金に次いで2番目のポテンシャルエネルギーを有します。ゆえにニートなイオンで居たくない、誰かと結合して錯体になって安定したいわけです。それを利用するとこのようなプラチナ製剤を投与することによってガン細胞内の核の中のDNAを配位子とした架橋錯体を生成する、つまりはプラチナがDNAの紐に割り込んでぐちゃぐちゃにしてDNAの複製を止めます。複製が止まれば細胞増殖も出来ないので抗がん作用を示すわけです。ただしプラチナにはガン細胞と一般細胞を見分ける能力がありませんからそれなりの副作用を伴います。しかし白金錯体の配位子交換反応を核酸で行うとは頭の良い薬剤設計ですね。このよう俯瞰してみるにプラチナは価値が下落した貴金属というイメージよりかは時価水準が4~6000円と安定しており用途もそれなりにあるので需要は高い方であると思えますね。特にEV車なんかは燃料電池なので中古車では消耗を気にしてなかなか売れないという話もあるのでディーゼル車の安泰はしばらく続きそうです。さて、このように高貴で利用価値もあるプラチナが捨てられてた時代がありました。15~17世紀の「スペインによるアメリカ大陸の植民地化」です。当時そこで採れた銀白色の塊はヨーロッパで食器や装飾品として重宝された銀だと思い込まれて持ち帰られましたが、プラチナは融点が1700℃でおまけに硬い。高貴な銀ではないことがわかればその暗幕に隠されていたプラチナは川へ投げ捨てられていったのです。その川で見つけられた銀白色の金属は「ピント川の小さい銀」という意味でplatinumと名付けられました。銀よりもランクが下がりましたね。と、このように総合的に見るにランクは金>銀>プラチナ>銅という風になりそうです。ダイヤモンド?あれはただの炭素ですから関係ありません。まあ実は金より銀の方が高かった時代もあったんですけどね主にエジプトで。金は単体で出てくるのに対して銀は錆びた状態で産出するので精錬の必要があったんですね。いつの時代も金属のランクは上がったり下がったりで情緒不安定ですね。

〈クレディスイス発行のプラチナのインゴット20g〉


〈純プラチナ板をハンマーで叩いて鍛造した白金プレート10g〉


〈自然白金の粒。プラチナも単体で産出するが砂金よりも極めて稀〉


〈ヘキサクロロ白金(Ⅲ)酸カリウム。需要が実験以外に無いので1gあたり13000円する〉


〈ヘキサクロロ白金(Ⅲ)酸のアンプル。実験用ボトル内で振って割って水溶液を調製する〉


〈テトラクロロ白金(Ⅱ)酸カリウム。実験用途以外に需要が無いので10gあたり8万円もする。〉


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