【応用編③】ミョウバンの結晶づくり【混晶】

みなさんこんにちは、manzanaです。
今日も今日とてミョウバンの結晶づくりの方法をご紹介します!
ミョウバンの結晶といえば正八面体の無色透明な結晶ですが、今回は有色のミョウバンの結晶づくりをご紹介したいと思います。

◆ 実験1
結晶に色を付けるだけですから、食紅や絵具などを混ぜれば良いような気がしてしまいます。
しかし、この方法では色にムラが出てしまいます。
実際にどうなるか実験してみましょう。

初回に紹介した温度差法と同じ方法でミョウバンの飽和水溶液を調製し、青1号の食用色素入れて青色の飽和水溶液を調製しました。ここに種結晶を入れて放冷し結晶を成長させてみます。
 

こちらが成長させた結晶です。
 

一見、ちゃんと青くなっているように見えますが、拡大してみると色つきにムラがあることが分かります。
(これはこれで綺麗ではありますが!)

ミョウバンではありませんが、実際に青い結晶はこんな感じになります。均一で綺麗な青色ですね!


このように、単に色素を入れただけでは均一に色がついた結晶をつくることはできません。これは、結晶が純粋な物質が規則的に並んだ集合体であることに起因しています。たとえばミョウバンは、正確には硫酸カリウムアルミニウム十二水和物という物質であり、ミョウバンの結晶には基本的にこの物質しか含まれません。ですので、ミョウバンにとって不純物である色素は結晶には取り込まれないことになります。
実際には多少は取り込まれますが、ミョウバン分子とは形が異なる色素分子を結晶中に規則的に、あるいは均一に配列することはできず、結果として結晶には均一に色がつきません。

しかし逆に言えば、ミョウバン分子にそっくりな色素分子があれば、ミョウバン分子と同様に結晶中に規則的に配列することができるため、結晶に均一な色付けをすることができるのです!!
ではさっそく実験してみましょう

◆ 実験2
今回はミョウバン分子にそっくりな色素分子としてクロムミョウバンを選択しました。
クロムミョウバンは硫酸カリウムクロム十二水和物という物質で、ミョウバンの分子中のアルミニウム原子をクロム原子に置き換えた分子です。

すこし話が逸れますが、クロムミョウバンは驚くべきことに実験キットとしてダイソーに売られています!(2021年7月現在)
今回はこちらのキットを使用していきたいと思います。
(実験手順の詳細は別の記事にまとめました)


ミョウバンとクロムミョウバンを質量比15:1でお湯に溶かして飽和水溶液を調製します。

調製した水溶液を放冷し、種結晶を投入して1晩静置します。初回にご紹介した方法と全く同じですね。


取り出した結晶がこちらです。綺麗な薄紫色をしていますね。
綺麗に均一に着色されていることが分かります。
(一部失透してしまったので、多少ムラがあるように見えてしまいますが)
 

普通のミョウバンと比較するとこの通りです。


先の青1号で着色したミョウバンと比較するとこんな感じです。


尚、クロムミョウバンの比率が高いほど結晶の色は濃くなりますが、あまり比率を上げすぎると真っ黒に見えてしまうので注意しましょう。
また、成長させた結晶が大きくなるほど色が濃く見えますので、育てたい結晶の大きさと好みの色の濃さに合わせてクロムミョウバンの比率を調製しましょう。

◆ 原理
今回の実験では、ミョウバンの結晶に均一に色を付けるために、ミョウバン分子にそっくりな色素分子としてクロムミョウバンを選択しました。
先ほども述べましたが、ミョウバンは正式には硫酸カリウムアルミニウム十二水和物という物質です。これを化学式で書くとKAl(SO4)2・12H2Oとなり、下記のような構造をしています。


黄色:S、紫色:K、銀色:Al、赤色:O、白色:H
(酸素原子の色が一部バグっていますが気にしないでください)
K+イオンとAl3+イオンにはそれぞれ6つの水分子 (酸素原子) が配位 (結合) しており、K+イオンとAl3+イオンの対アニオンとしてSO42-イオンが2つ存在しています。示性式として書くと[K(H2O)6][Al(H2O)6](SO4)2となります。
これに対してクロムミョウバンの構造はこちらです。


黄色:S、紫色:K、紺色:Cr、赤色:O、白色:H

はい、、、ほぼ同じなのです。クロムミョウバンは組成だけでなく構造においてもアルミ原子がクロム原子に置き換わっていることが分かります。
先にも述べましたが、ある物質Aに構造がそっくりな別の物質Bは、Aと同様に結晶中に規則的に、そして均一に配列することができるため、均一な組成の結晶をつくることができます。このような結晶を混晶と呼びます。
正式には、ミョウバンは [MI(H2O)6][MIII(H2O)6](SO4)2の式で表される化合物全般を指す言葉で、我々が単にミョウバンとよく呼んでいるものはMI:K、MIII:Alの物質です。この式に当てはまる化合物であれば大体混晶をつくることができると考えられるのですが、残念ながら一般的な有色のミョウバンはMIII:CrまたはFeであり、どちらも紫色です。(ほかにあれば是非教えてください!)

◆ おわりに
いかがでしたしょうか。紫色のミョウバンの結晶はまるで蛍石みたいで綺麗ですね!今回は温度差法でつくりましたが、ミョウバンの結晶づくりに使える方法は全て同様に使えます。皆さんも是非クロムミョウバンの混晶づくりにチャレンジしてみてください!!

(クロムミョウバンの濃度が先ほどより高い溶液にて、寝かせ式蒸発法で成長させた混晶)

◆ リンク
【基礎編】ミョウバンの結晶づくり【温度差法】
【応用編①】ミョウバンの結晶づくり【密度拡散法】
【応用編②】ミョウバンの結晶づくり【寝かせ式 蒸発法】

≪≪ 戻る