【応用編②】ミョウバンの結晶づくり【寝かせ式 蒸発法】

みなさんこんにちは、manzanaです。
今回もミョウバンを使った別の結晶づくりの方法をご紹介します!
初回ではお手軽なミョウバンの結晶づくりを、前回は密度拡散法による透明度の高いミョウバンの結晶づくりをご紹介しました。
しかし、こう思った方もいるのではないでしょうか!?
・角が尖っておらず、形が悪い!
・糸が入っていて見栄えが悪い!
そんな方のために、
今回はパーフェクトな\"寝かせ式蒸発法\"をご紹介したいと思います!!

◆ 実験
<材料>
・飽和水溶液
・種結晶 (なるべく八面体に近いもの)
・容器
・ろ紙 (もしくはコーヒーフィルター)
・漏斗
・サランラップ
・ピンセット
(・冷蔵庫)

<実験操作>
今回の実験は室温の変化を最小限にするため、冷蔵庫で行うことをおススメします。
① 冷蔵庫で保管した飽和水溶液をろ過して容器に入れます。
② 種結晶の八面ある三角形のうち、最も小さい面が下になるようにして容器内に置きます。液面は種結晶から1 cm以上は高くなるように調整しましょう。
(種結晶は複数置いても構いません)
③ 育成開始から数日はサランラップで蓋をして、ゴミの混入を防ぐとともに、蒸発できる水の量を適度に制限すると失透やヒビが入る可能性が減ります。
④ 容器を冷蔵庫に入れます。
⑤ 1日1回最も小さい面が下になるように種結晶を置きなおします。
⑥ ラップをしている場合は、同様に1日1回サランラップを外して水分が再度蒸発できるようにします。
⑦ ゴミが入ったり、他の小さな結晶が沸いてきたら、種結晶に付かないようにろ過して取り除きます。
⑧ ⑤と⑥を繰り返し、好みの大きさになるまで繰り返します。


◆ 温度差法との比較
一ヶ月ほど今回の方法で成長させた結晶がこちらです。


初回の温度差法と比較すると、透明度が高いことに加えて角が尖っていて正八面体に近い整った結晶であることが分かります。
(左側が初回の温度差法、右側が今回の寝かせ式蒸発法)
  

◆ 原理
これまでご紹介した方法は溶解度の温度差を利用して結晶を成長させていました。
これに対して今回の方法は、飽和水溶液から水が蒸発することで、その分の溶けきれなくなったミョウバンが種結晶を成長させていきます。
しかし、定期的に種結晶の最も小さい面が下になるように置きなおさなければ、八面体には成長せず、大体は潰れた六角形のような形になってしまいます。
これは何故なのでしょうか。


容器の底に結晶を置いて成長させる場合、底があるので底方向に成長することはできません。一方で、それ以外の方向は自由に成長することができます。従って、底に置いた面を広げるような形で結晶が成長していき、結果として次第に潰れたような結晶になっていくのです。


では何故、種結晶の八面ある三角形の面の中で最も小さい面を下に向けて成長させることで、種結晶の形が整っていくのでしょうか。
それは最も小さい面 = 最も成長が早い面 であるためです。
あまりイメージが付かないかもしれませんが、結晶を成長させるということは、原子や分子を積み上げていくということです。同じ結晶の中でも方向によって積み上げ易さは異なっており、積み上げて易い方向ほど結晶の成長速度は速くなります。実際の結晶の形の見え方としては、成長の早い方向ほど原子をどんどん積み重ねて尖っていきます。これに対して成長が遅い方向は、原子を積み上げる速度が遅いために面として残っていきます。


ミョウバンに置き換えると、6つの頂点方向が最も成長が早く、8つの三角形の方向が最も成長が遅いということになります。このことは正八面体の中心からの距離を考えるとわかりやすいです。一辺の長さがaの正八面体において、中心から頂点までの距離はa/√2、三角形の面までの距離はa/√6ですから、頂点までの距離の方が遠く、同じ時間でより早く (長く) 成長していることが分かります。


従って、同じ8つの三角形の面どうしで比較した場合、最も小さい面は最も角に近い面と言い換えることができるため、この面が最も成長の早い面ということになります。先の説明の通り、容器の底に結晶を置いて成長させる場合、底があるので底方向に成長することはできません。よって、最も成長した面を下にして成長させることで、その面方向の成長を抑えながら他の面方向を成長させるため、綺麗な正八面体に形を整えることができます。

◆ おわりに
いかがでしたしょうか。冒頭でも述べましたが、今回の方法は結晶の形を整えながら成長させることができる大変優れた方法です。また、この方法は塩 (塩化ナトリウム) などの溶解度の温度変化が少ない物質にも適用することができます。その分、日々の手入れが必要で手間はかかりますが、苦労に見合った素晴らしい結晶が得られると思います!
皆さんも是非様々な結晶づくりにチャレンジしてみてください。


◆ リンク
【基礎編】ミョウバンの結晶づくり【温度差法】
【応用編①】ミョウバンの結晶づくり【密度拡散法】

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