【前編】卵の殻とお酢からアセトンと燃えるジェルを作る。

卵の殻とお酢から燃えるジェルを合成します。

みなさんはじめまして。
応化くまくです。

とっつきやすい実験の簡単な記事を書いていきたいと思います。初心者なので間違いや改善点などがありましたら教えていただけると幸いです。
自己紹介など詳しくはプロフィールをご覧ください。

さて、記念すべき初投稿ですがタイトルにもある通り今回は卵の殻とお酢からアセトンと燃えるジェルを合成します。この実験は使用する試薬や器具が簡単に手に入れられるので家庭で再現できとてもおすすめです。
この前編では燃えるジェルを作ります。

まずは実験の原理説明。卵殻の主成分は炭酸カルシウム(CaCO₃)です。これに食酢などに含まれる酢酸(CH₃COOH)を反応させると酢酸カルシウム(Ca(CH₃COO)₂)が得られます。

(反応式:CaCO₃+2CH₃COOH→Ca(CH₃COO)₂+H₂O+CO₂↑)※実際は酢酸カルシウムは1水和物として得られるので注意。

よく小学生の自由研究などでぷよぷよ卵を作る実験がありますがその反応と同じです。あの実験は卵の殻を食酢で溶かし、卵殻膜をむき出しの状態にしています。(だからぷよぷよ)
今回は卵本体の方ではなく殻と、その生成物に用があります。
飽和酢酸カルシウム水溶液をアルコール(今回は無水エタノールを用います。)に混ぜると酢酸カルシウムはアルコールにはほとんど溶けないので析出し、ゲルというコロイドを形成します。ちなみに酢酸カルシウムにとってのアルコールのように溶解度が低い溶媒を貧溶媒といいます。

ここでコロイドという言葉がでてきました。コロイドをまだ習っていなくてもこの記事を読んでいる人なら聞いたことがあるかもしれません。
コロイドとは直径1~100nm(nは10^-9)の粒子が液体などに分散している物質の状態を指します。牛乳などが有名な例でしょう。牛乳の場合、水に油脂類が分散しているコロイドです。

この場合の水を分散媒、油脂類を分散質といいます(分散させているものと分散しているもの、溶媒と溶質をイメージするとわかりやすいですね)。今回の実験で出てくる「ゲル」というものはこの分散媒が固体(酢酸カルシウム)で、分散質が液体(アルコール)のコロイドです。
コロイドについて語ると長くなりそうなのでこの辺にしておきます。興味のある人はヨビノリさんの講義動画などを見てみてください。

それでは実験の方を始めていきましょう!

◆使用器具◆
・容量の適当なビーカー
・漏斗
・ろ紙
・加熱器具
・ガラス棒
・薬さじ
・ライター

◆使用試薬◆
・純水
・卵の殻
・氷酢酸(食酢でも代用可)
・無水エタノール(ドラッグストアで購入可能)

◆操作◆
① 砕いた卵の殻15.75gを酢酸溶液に加え温めます。反応を早める&完全に進行させるために酢酸は多めに入れますが入れすぎると臭いので水で希釈しました。(理論的には18.9gで十分ですが。)


② 反応が終わったら溶液を自然ろ過します。(ろ液がほしいのでひだ付きろ紙でろ過します。)

③ 溶液を蒸発乾固します。酢酸カルシウムは約160℃で熱分解を起こすので穏やかに行います。(この熱分解は後編で詳しく取り扱うのでお楽しみに。)


④ ある程度水分が飛んだら回収します。乾燥機なんていう便利なものがないので多少水分が残ってしまいますが諦めましょう。ちなみにガバガバですが収率(理論上の得られる生成物の質量で実際に得られた生成物の質量を割って百分率にしたもの)は61.94%でした。

⑤ 純水約10mLに得られた酢酸カルシウム1水和物を氷浴しながら飽和するまで加えます(※酢酸カルシウムは温度が低い方が溶解度が増大します。参考程度に酢酸カルシウムの溶解度は0℃で約35g/100gH₂Oです。)


⑥ メスシリンダーで無水エタノール60mLを量り、ビーカーに入れます。(ビーカーの目盛りは模様みたいなものなのであまり信用してはいけません、が今回はそこまで厳密でなくてもできます。)

⑦ ⑤の酢酸カルシウムaqを⑥の液に加えかき混ぜます。

⑧ 瞬く間にゲル化し完成です。(ここ興奮ポイント)


以上でゲルの作成は完了です。あとはこれを燃やしてみましょう!



こんな感じで燃えます。

燃えかすは消火を完了させたらそのまま捨てて大丈夫です。(この燃えかすは後編でも登場します。)

ちなみに冷水で濡らした手のひらの上で燃やすこともできます!



いかがでしたでしょうか。自分はゲル化する瞬間の感動が忘れられませんでした。この感動と興奮をぜひみなさんも実際にやってみて肌で感じてみてください!!読んでくださりありがとうございました。(次回以降なるべく写真も多めに入れるようにします。)

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