【第37回おうちラボで実験してみた】ランタノイド元素から蛍光物質を合成してみた。

〈実験〉無機化学・無機合成化学

それでは実験パートです。
今回ランタノイドのうちから特に蛍光性が強く、実際に蛍光体として広く利用されているユウロピウム(Eu)とテルビウム(Tb)を実験に使っていきたいと思います。テルビウムは単体を、ユウロピウムは2年ほど前に単体から合成したものの使い道に悩んで放置気味になっていた酸化ユウロピウムを使いたいと思います。今回これらを硫酸と反応させます。ただ、それぞれの硫酸塩はそれ自体それなりの蛍光を示すのですが、硫酸ルビジウムと複塩にするとさらに蛍光が強くなることを確認しました。謂わばランタノイド版光るミョウバンってところでしょうか。
それぞれの反応式は以下です。
〈硫酸ルビジウムテルビウム〉
2Tb+3H₂SO₄→Tb₂(SO₄)₃+3H₂
Tb₂(SO₄)₃+Rb₂SO₄→Rb₂Tb₂(SO₄)₄
〈硫酸ユウロピウムルビジウム〉
Eu₂O₃+3H₂SO₄→Eu₂(SO₄)₃+3H₂O
Eu₂(SO₄)₃+Rb₂SO₄→Eu₂Rb₂(SO₄)₄
それではさっそく実験していきましょう。

●実験
※注意
硫酸は皮膚粘膜刺激性・腐食性を有します。いずれの試薬も薬傷、失明の危険性があり、重篤な事故につながる恐れがあります。安易な真似は控えてください。実験者は白衣、保護眼鏡、手袋を着用し、必要に応じて局所排気設備を使用しています。

◆材料◆
・テルビウム粉末
・酸化ユウロピウム
・硫酸ルビジウム
・35%硫酸

◆器具・装置◆
・適当容量ビーカー
・メスシリンダー
・時計皿
・吸引ろ過瓶
・ホットマグネチックスターラー
・水流式アスピレーター

〈硫酸ルビジウムテルビウム〉
① テルビウム4.13gに適量の水と35%希硫酸10.0mlを加えて加熱し、テルビウムを溶かす。
 

② 硫酸テルビウムが沈降するので全て溶け切るまで水を加えてさらに加熱する。


③ 硫酸ルビジウム3.47gを水50mlに溶かす。
 

④ ②に③を加えて加熱濃縮する。


⑤ 析出した沈殿を吸引ろ過で回収して水蒸気浴で乾燥する。


⑥ 紫外線を当てて蛍光を確認する。


〈硫酸ユウロピウムルビジウム〉
① 酸化ユウロピウム4.57gに水を適量加えて懸濁し、35%希硫酸9.0mlを加えて加熱溶解する。
 

② 生成する硫酸ユウロピウムが溶け切るまで水を加えて加熱する。


③ 硫酸ルビジウム3.47gを水50mlに溶かす。
 

④ ②に③を加えて加熱濃縮し、生成した沈殿を吸引ろ過で回収して水蒸気浴で乾燥する。


⑤ 紫外線を当てて蛍光を確認する。


めでたく蛍光物質の合成に成功しました。しっかりユウロピウムは赤色に、テルビウムは黄緑色に光ってくれました。他の希土類を使ったらまた別の色に光るのかというとそういうわけでもなく、やはり紫外線を当てたときの状態遷移のエネルギー差に依存すると言えます。ユウロピウムとテルビウムは実際に蛍光体としての利用例があるので流石の爆光具合でした。それでは次回の実験までさよなラジカル。

えざお
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