【第20回おうちラボで実験してみた】金属配位子のジベンザルアセトンを合成してみた。

〈実験〉有機合成化学・有機化学・錯体化学

みなさんこんにちは。
松茸の匂い作りに引き続きベンズアルデヒドを使った実験を行います。ストックが1kgもありますからさっさと消費したいのです。ベンズアルデヒドは基質として割と有用でそこそこ色んなものが作れるので今回はそのうちの一つ、ジベンザルアセトンを合成したいと思います。ジベンザルアセトンは主に遷移金属への配位子として利用されています。

●反応について
ジベンザルアセトン合成は2分子のベンズアルデヒドと1分子のアセトンによるAldol縮合で合成されます。
Aldol縮合とはカルボニル化合物のα水素を塩基で引き抜いてエノラートが生成してから起こる縮合反応でβ-ヒドロキシカルボニル化合物が生成する反応ですが、ジベンザルアセトンの合成に関してはヒドロキシ基がE1cB脱離を起こすため不飽和結合が形成されます。Aldol縮合とE1cB脱離を2回繰り返して不飽和ケトンが形成されます。反応機構は以下です。


水酸化物イオンがアセトンのα‐水素を引き抜き、エノラートが生成し、ベンズアルデヒドのカルボニル炭素に求核攻撃します。求核付加後にメチレン基から水素が引き抜かれ、OH基のE1cB脱離が起こります。これをもう一回繰り返してジベンザルアセトンが生成します。

●実験
※注意
ベンズアルデヒドは皮膚粘膜刺激性と毒性を有します。アセトンは麻酔性と引火性を有します。水酸化ナトリウムは皮膚粘膜刺激性・腐食性を有します。いずれの試薬も薬傷、失明の危険性があり、重篤な事故につながる恐れがあります。安易な真似は控えてください。実験者は白衣、保護眼鏡、手袋を着用し、必要に応じて局所排気設備を使用しています。

~材料~
・ベンズアルデヒド
・アセトン
・エタノール
・水酸化ナトリウム

~器具・装置~
・500ml三口フラスコ
・適当容量ビーカー
・側管付き滴下漏斗
・ジムロート冷却器
・吸引ろ過器
・温度計
・マグネチックスターラー
・マントルヒーター
・水流式アスピレーター

① 500ml三口フラスコにエタノール125mlと3mol/L水酸化ナトリウム水溶液75mlを入れる。
 

② 三口フラスコの中央の口に冷却管を付け、側部の口に滴下ろうとを付ける。滴下漏斗にベンズアルデヒド16mlとアセトン5mlの混合液を入れておく。


③ ベンズアルデヒド-アセトン混合物の半分をフラスコ内に滴下する。黄色い沈殿が生じる。
 

④ 残りの半分のベンズアルデヒド-アセトン混 合物を滴下する。


⑤ 反応液を30分間撹拌する。


⑥ 生成物の黄色固体を吸引ろ過で回収し、純水で数回洗浄する。


⑦ 得られた粗生成物をエタノール50mlで再結晶精製する。
 

⑧ 吸引ろ過で結晶を回収する。ジベンザルアセトンが得られた。収率は60.18%であった。


黄色結晶のジベンザルアセトンが得られましたが、収率は低めでした。もう少し丁寧な実験操作を行えば良かったと反省です。わりと再結晶が難しかった印象でした。また一つ合成品コレクションが増えたので良しとしましょう。次回の実験までさよなラジカル。

えざお
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