【第17回おうちラボで実験してみた】 遷移金属錯体トリスオキサラト鉄(Ⅲ)酸カリウムを合成してみた。

〈実験〉錯体化学・無機合成化学

みなさんこんにちは。以前ニッケル錯体を合成しましたが今回は鉄錯体を合成したいと思います。鉄の化合物といえば錆の黒色や赤褐色などあまり鮮やかなイメージがありませんが、やはり遷移金属たるもの錯体にしてしまえば美しい色がつきます。今回はトリスオキサラト鉄(Ⅲ)カリウムを合成していきたいと思います。3つ(tris)のシュウ酸が配位している構造を取っています。

化学反応式は以下の通り。
Fe³⁺+3C₂O₄²⁻+3K⁺→K₃[Fe(C₂O₄)₃]
この錯塩は水溶液の状態で光を当てると分解反応が起こり鉄(Ⅱ)イオンが生じるのでヘキサシアニド鉄(Ⅲ)酸カリウムと共存させて光を当てるとプルシアンブルーと呼ばれる濃青色沈殿が生じます。これを利用したのが青写真です。光が当たった部分のみ青く変色する感光紙が作れます。

●実験
※注意
シュウ酸は強い毒性を有します。塩化鉄(Ⅲ)無水物は皮膚粘膜刺激性と強い酸化力を有します。水酸化カリウムは皮膚粘膜刺激性・腐食性を有します。いずれの試薬も薬傷、失明の危険性があり、重篤な事故につながる恐れがあります。安易な真似は控えてください。実験者は白衣、保護眼鏡、手袋を着用し、必要に応じて局所排気設備を使用しています。

◆材料◆
・シュウ酸
・水酸化カリウム
・塩化鉄(Ⅲ)無水物
・水

◆器具・装置◆
・適当容量ビーカー
・ホットマグネチックスターラー
・氷浴
・吸引ろ過器
・水流式アスピレーター

① シュウ酸37.8gを水80mlに溶かす。
 

② 水酸化カリウム33.6gを少しずつ加えていく。急激な発熱と沸騰に注意する。溶解熱および中和熱で結晶は溶け切るはずだが、もし残るようなら加熱して完全に溶かす。
 

③ 塩化鉄(Ⅲ)無水物9.72gを水15mlに溶かす。
 

④ ③を②に加えると色が無色から緑色に変化する。溶液体積が100mlになるまで加熱濃縮する。暗い部屋で行うと光分解反応が抑えられる。


⑤ 氷浴で冷却して結晶を析出させる。


⑥ 吸引ろ過で結晶を回収する。


⑦ トリスオキサラト鉄(Ⅲ)酸カリウムが得られた。


鉄化合物とは思えない美しい鮮やかな黄緑色結晶が得られました。ずんだみたいで美味しそうですが医薬用外劇物のシュウ酸塩類なので絶対に口にしてはいけません。眺めてうっとりするだけにしておきましょう。また次回の実験までさよなラジカル。

えざお
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