【第16回おうちラボで実験してみた】 遷移金属錯体ヘキサアンミンニッケル(Ⅱ)塩化物を合成してみた。

〈実験〉錯体化学・無機合成化学

みなさんこんにちは。
今回は無機合成実験として遷移金属錯体を合成していきたいと思います。遷移金属といえばクロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)などが身近に存在しており、それらのイオンは美しい色を呈することで知られています。これら金属イオンに配位子と呼ばれる分子が配位結合したものを金属錯体と呼びます。配位子や金属イオンの種類を変えることで様々な色の錯体を作り出すことができます。電気陰性度が強めで電子が豊富つまりはマイナスの電荷を帯びた原子がプラスの電荷を帯びた金属イオンに配位しやすく、窒素や酸素、硫黄などを含む化合物が配位子になりやすい傾向があるようです。
今回はヘキサアンミンニッケル(Ⅱ)塩化物を合成していきます。名前の通り6個(hexa)のアンモニアがニッケルイオン(Ni²⁺)に配位しています。六座配位なので正八面体構造を取ります。
合成の化学式は以下。
Ni²⁺+6NH₃+2Cl⁻→[Ni(NH₃)₆]Cl₂
少なくともこのレベルの錯体合成は基本的に薬品を混ぜるだけの簡単なものです(専門の人に怒られそう)。
それでは早速実験を始めていきましょう。

●実験
※注意
濃アンモニア水は皮膚粘膜刺激性・腐食性を有します。塩化ニッケル六水和物は皮膚粘膜刺激性と発癌性を有する重金属塩です。エタノールは麻酔性と引火性を有します。いずれの試薬も薬傷、失明の危険性があり、重篤な事故につながる恐れがあります。安易な真似は控えてください。実験者は白衣、保護眼鏡、手袋を着用し、必要に応じて局所排気設備を使用しています。

~材料~
・塩化ニッケル六水和物
・塩化アンモニウム
・濃アンモニア水
・エタノール
・水

~器具・装置~
・100mlビーカー
・メスシリンダー
・駒込ピペット
・マグネチックスターラー
・氷浴
・吸引ろ過器
・水流式アスピレーター

① 塩化アンモニウム4.0gを水10mlに溶かす。
 

② 塩化ニッケル六水和物10gを水7.0mlに溶かす。
 

③ ①の溶液10mlを加えて撹拌する。


④ 濃アンモニア水20mlを加えると色が緑色から青色に変化する。


⑤ 氷浴で冷却して結晶を析出させる。


⑥ 吸引ろ過で回収する。エタノールで数回洗浄する。


⑦ ヘキサアンミンニッケル塩化物が得られた。


ニッケルなのに美しいコバルトブルーの錯体の結晶が得られました。このように遷移金属錯体はエグいほど人の心を掴む魅力があるのです。それでは次回の実験までさよなラジカル。

えざお
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