【第15回おうちラボで実験してみた】有機合成でうんこの匂いを作ってみた〈プロピオンアルデヒドの合成編〉

〈実験〉有機合成化学

みなさんこんにちは。
前回はフェニルヒドラジンを合成しましたが、今回はインドール合成に必要なもう一方の基質であるアルデヒドのうちプロピオンアルデヒドを合成していきたいと思います。
フェニルヒドラジンとプロピオンアルデヒド をガッチャンコすればめでたくスカトールが得られます。それではいつもの如くさらっと反応を説明します。

●反応について
アルデヒドの合成は高校化学でも習う通り第一級アルコールの酸化で行います。第一級アルコールの酸化は二段階あり、アルコール→アルデヒド→カルボン酸という風に変化していきます。今回は酸化剤に硫酸酸性二クロム酸カリウムを用いますが、そのままだとカルボン酸にまで酸化してしまうため、沸騰させた1-プロパノールに酸化剤を加えていくという操作を行うことで中間体のアルデヒドを生成した瞬間に気化させて蒸留します。反応装置にも工夫が必要です。
反応機構は以下です。

二クロム酸イオンにアルコールのヒドロキシ基の酸素が求核的に付加、脱水し、クロム酸エステルを形成します。その後α位の水素が引き抜かれることでC-H結合電子がクロムに流れる過程でカルボニル基が形成され、アルデヒドとして脱離します。

●実験
※注意
1-プロパノールは引火性を有します。二クロム酸カリウムは強い皮膚粘膜腐食性と環境毒性を有します。濃硫酸は皮膚粘膜刺激性・腐食性を有します。いずれの試薬も薬傷、失明の危険性があり、重篤な事故につながる恐れがあります。安易な真似は控えてください。実験者は白衣、保護眼鏡、手袋を着用し、必要に応じて局所排気設備を使用しています。

~材料~
・1-プロパノール
・二クロム酸カリウム
・濃硫酸
・モレキュラーシーブ3A

~器具・装置~
・500ml三口フラスコ
・100ml丸底フラスコ
・側管付き滴下漏斗
・ビグリューカラム
・単蒸留装置
・スターラー付きマントルヒーター
・冷却水循環装置
・低温調理器具
・プラスチック製ミニコンテナ
・水流式アスピレーター
・ドラフトチャンバー

① 水200mlに硫酸28.8mlと二クロム酸カリウム39.6gを加える。


② 反応装置を組み立てる。フラスコに縦に接続した冷却器はアルデヒドと共に蒸発してくる1-プロパノールを還流する役割がある。低温調理器具で60度に保ちながらアスピレーターで吸引すると循環させることができる。


③ 反応装置に1-プロパノール30mlを入れて加熱し沸騰したところで①を滴下していく。


④ 酸化剤を全量滴下し終えたら留分を回収し、モレキュラーシーブ3Aで乾燥させる。


⑤ 留出液(1‐プロパノールとプロピオンアルデヒドの混合物)をビグリューカラムを用いて蒸留精製する。


⑥ 精製プロピオンアルデヒドが得られた。サンプル瓶に保存する。
 

今回得られた精製プロピオンアルデヒドの収率は38.55%でした。低収率の原因として反応系の撹拌不足や還流管の温度が高く1-プロパノールの冷却が間に合わず逃げて行ってしまうことが考えられます。しかし今回得られたプロピオンアルデヒドの量は次回の実験には十分です。次回はいよいよインドール合成です。それでは次の実験までさよなラジカル。

えざお
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