それでは早速「キムワイプおいしい」を目指していきましょう。
※注意
安全性を確保しています。安易な実験は重篤な怪我や事故につながる恐れがあるので控えてください。
◆材料◆
・キムワイプ(日本製紙クレシア)
・繊維分解酵素セルラーゼ+pH調整剤セット
・イソプロパノール
・フェーリング液(A液+B液)
・精製水
・活性炭
◆器具・装置◆
・三角フラスコ
・ビーカー
・ブフナー漏斗
・吸引ろ過瓶
・ミキサー
・ざる
・圧力鍋
・乾燥機
・マイクロピペット
・インキュベーター
・水流式アスピレーター
・冷却水循環装置
・ロータリーエバポレーター
① 細かく切り刻んだキムワイプ30gを圧力鍋で煮る。



② ミキサーにキムワイプと多量の水を加えて破砕し、ざるで漉したあと絞って乾燥させる。


③ 乾燥後の塊をさらにミキサーで破砕する。綿のような形状になる。

④ 精製水1000mlにpH調整剤300μlを入れ、最適pH4.0~5.0にする。その水1000mlに30000μlのセルラーゼ原液を加える。


⑤ ④で調整したセルラーゼ液に破砕したキムワイプを入れて50℃で336時間インキュベートする。

⑥ 336時間後目に見えてキムワイプの量が減っている。反応液をろ過して未反応分を除去する。


⑦ ろ液に活性炭を加えて加熱し、酵素吸着を行うとともに溶液の体積を減らしておく。

⑧ ろ過して活性炭を除いたのちイソプロパノールを加えてロータリーエバポレーターで溶媒留去する。共沸で水分を飛ばす。

⑨ 蜂蜜のような褐色の粘稠な糖液が得られた。着色は酵素タンパク質によってメイラード反応が起こってしまったと考えられる。

⑩ フェーリング液が還元され、酸化銅(Ⅰ)の赤褐色沈殿が生じた。オリゴ糖の生成が確認された。


今回得られたこの液体の主成分は理論上セルロースの加水分解によって生成したセロビオースであると考えられます。実験生成物を口にするのは本来御法度ですがこの研究の目的は「キムワイプおいしい」を実現することですから背に腹はかえられず舐めてみます。
「甘い!おいしい!」
なんとキムワイプが美味しいのです。蜂蜜をフルーティーにした爽やかな甘さ。マジで美味い。パンに塗って食べたいもん。ついにキムワイプを食えるようにしてやりました!ほとんど原型留めて無いけど!これはキムワイプ界隈激震の歴史的快挙でしょう。今回このキムワイプから得られた糖を命名法に則って「キムオース」と名付けることにしました。結晶化にまで至れなかったのは残念でした。
●追記
実はキムワイプを酢酸で煮て化学分解してセルロースを抽出する実験を行っていたのですが、得られたセルロースは結晶性が高いためにセルラーゼに対しての反応性が乏しく糖化するにはあまりにも合理的では無かったことが判明しました。それを裏付けるとまでは言いませんが、結晶性セルロースの脱脂綿も今回の実験で分解されませんでした。

化学実験はトライアンドエラーの繰り返しなのでまた一つ(無駄な)知識が増えました。
それでは次回の実験までさよなラジカル。
えざお
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