【第4回おうちラボで実験してみた】悪用厳禁!トリカブトから猛毒アコニチンを抽出してみた。

〈実験〉天然物有機化学・分離化学

みなさんお待ちかねの実験パートです。
今回の実験は致死性の高い猛毒を扱うので真似をして何か事故っても僕は一切責任を負いません。そして何より悪用しないでください。
では早速始めていきましょう。

※注意
ジクロロメタンは有機溶媒で粘膜刺激性、麻酔性があります。また、トリカブトは致死性の毒を有します。いずれの材料も重篤な症状につながる恐れがあります。安易な真似は控えてください。

◆材料◆
・トリカブトの塊根
・ジクロロメタン
・酒石酸
・純水

◆器具・装置◆
・ソックスレー抽出器一式
・分液漏斗
・メスシリンダー
・ビーカー
・ミクロスパーテル
・ざる
・ホットマグネチックスターラー
・冷却水循環装置
・ロータリーエバポレーター


① トリカブトの塊根をよく水で洗い土を落とす(アコニチンは水に不溶なためこの段階では溶け出してこない)。
 

② トリカブトの塊根を輪切りにする。使った包丁はガスコンロで炙り、まな板は熱湯をかけて毒を不活性化しましょう。


③ 輪切りにしたトリカブトの塊根をざるに移して3日間天日干しし、よく乾燥させる。
(後に大きめの箱に新聞紙を敷いてその上に塊根を広げ、扇風機の弱風を当て続けた方が乾燥は効率的だと判明)


④ 乾燥させたトリカブトの塊根をフードプロセッサーに入れて粉砕する(このフードプロセッサーは今後料理に使わない方がよい)。


⑤ ソックスレー抽出器に脱脂綿を詰め、その上からトリカブトの塊根の粉末を入れてさらにその上から脱脂綿で蓋をする。フラスコにジクロロメタン150mlを入れてソックスレー抽出器一式を組み上げる。還流過程でアリーン式冷却器で凝縮したジクロロメタンはソックスレー抽出器に溜まり、目的物を抽出しながら細いU字側管によるサイフォンの原理で下部のフラスコへ落下し、これを延々と繰り返す。


⑥ ジクロロメタンの沸点に合わせてホットマグネチックスターラーの加熱をスタートし、溶媒を撹拌する。これによって突沸が防げる。どんどんフラスコ内のジクロロメタンが抽出物で濃くなっていく。1回の抽出につき2~3時間ほど抽出を行う。


⑦ 抽出液を分液漏斗に入れ、予め調整した10%酒石酸水溶液50mlを加えて振とうし、水層を回収する。有機層を分液漏斗に戻して同様の操作をあと2回繰り返す。
※分液操作において激しく振とうしすぎるとエマルション(乳化)することがあるので注意。
   

⑧ アコニチンの酒石酸塩が溶けているであろう水層に炭酸ナトリウムを少しずつ加えていく。液が塩基性に傾くと発泡しなくなり、遊離アルカロイドが析出して白濁する。これを目安とする。
 

⑨ ⑩の液を分液漏斗に入れ、ジクロロメタン30mlを加えて振とうし、有機層を回収する。同様の操作をあと2回繰り返す。
 

⑩ 回収した有機層をロータリーエバポレータで溶媒留去する。


⑪ ある程度ジクロロメタンが飛んだらビーカーに移して放置する。

⑫ ジクロロメタンが完全に飛びきるとビーカーの底に放射状結晶のアコニチンが析出する。


⑬ これをミクロスパーテルなどで砕いて粗結晶を得る。アンプルやサンプル瓶に入れて保存する。


今回は粗結晶を得た段階で妥協することにしました。精製にはカラムクロマトグラフィーや再結晶などが用いられますが、前者はフラクションのどこにアコニチンが存在しているのか判らないし、後者は不毛に感じたので止めました。コレクションとして持っている分には十分だと思います。今回得られた粗結晶はおそらく大部分がアコニチンでその他のアルカロイドが混合している状態だと考えられます。何度も言うようですがこの量だけで200人相当の致死量なので取り扱いには細心の注意を払ってください。というか真似するな!

それでは次回の記事まで
さよなラジカル。

えざお
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